見えないコルセット

人を、泣かせてしまった。

たくさん辛い思いをした人を、泣かせてしまった。

追い討ちをかけるような形で。



僕一人の責任じゃない。

でも、僕に責任がないわけじゃない。

泣かせてしまった。

泣かせたくなかった。

今、僕がすごく好きで、大切な人なのに。

すごく辛くて、心を痛めていることは、よく分かっていたはずなのに。

自分のことを、優先させて、

結果、

人を泣かせた。



上手く、謝れなかった。

ちょっと俯いて、「ごめん」としか言えなかった。

その人は赤く腫れた目で許してくれた。

でも、どんなにひどいことをしただろう。

もう我慢できないと、毎日のように言っていた。

それを僕は、もう少し我慢するように、というような形に持っていってしまった。

どれだけ涙を流したんだろう。

僕がいないところでも、たくさん泣いたに違いない。

それなのに、もっと泣かせた。

僕は、今日この人と接した人間の中で一番、

この人にひどい仕打ちをしたんだ。



どれだけ、辛かったろう。

どれだけ、辛かったろう。

想像も出来ない。

僕の少し苦しいだけの思いなんか、天秤にかけることすら出来ないくらい。

とても苦しかったに違いない。



何でだろう。

何で、僕は人を辛くさせるのがこんなに上手いんだろう。